■学生生活 お金のリアル(岡山県岡山市)
幼い時に法曹を志して以来、一筋に夢に向かって歩いてきた岡山大学法学部4年の山本晶さん(仮名)。サークル活動でも法律の勉強を重ねながら、アルバイトに、友人との遠出や旅にと、充実した学生生活を送っています。4月からは岡山大学大学院法務研究科(ロースクール)に進学し、司法試験を目指してさらなる勉強に励みます。(写真=本人提供、部屋に並ぶ法律関係の教科書)
家賃は4万2000円
愛媛県松山市出身の山本さんは、小学校の時に交通事故のニュースを見て、被害者が1人亡くなっても、運転していた加害者は死刑にならないことが気になって、法律に興味を持つようになりました。そして、被害者を第一に考えたいと検察官を志望するようになり、法曹に入ることを視野に入れて法学部への進学を目指しました。岡山大学は学費が安い国立大学で、法学部で総合型選抜を実施していることから、総合型選抜で受験し、合格しました。

――愛媛県から海を渡って岡山県に進学する人は少ないのですか。
大学進学時に、中国地方や関西に進学する人は結構いるので、私も両親も大学に受かったら家を出るという気持ちでした。地元の愛媛大学は法文学部で、法学部ではなかったので、高校3年の時に担任の先生が教えてくれた岡山大学法学部の総合型選抜を受けることにしました。1次試験はグループ面接と書類審査、2次試験はセンター試験(当時)の英語の点数で決まりました。
周りの友人を見ると、地元・岡山だけでなく、兵庫、香川、愛媛などから進学しています。一人暮らしの人も多いですね。私は大学近くの賃貸マンションに住んでいて、自転車で大学に通っています。自転車でだいたいどこでも行けるので便利です。
――住んでいるのはどんなところですか。
水道代2000円を含めて家賃4万2000円の物件に住んでいます。大学生協に紹介してもらったところで、バス・トイレ別で収納が多いところを選びました。朝から夜までほぼ大学にいるので、家にいる時間は短く、光熱費は月5000円くらいです。
――食事や家事はどうしていますか。
洗濯は週1〜2回で、着るものやタオルなどがなくなってきたら洗濯機を回しています。大学から帰ってくるのが遅いので、夜に洗濯して、部屋の中に干してから寝ます。掃除は気がついた時にします。
家で自炊はほとんどしません。岡山大学では学生証と一体になった「ミールカード」があります。年間約25万円のミールカードを申し込むと、1日上限1200円まで、大学生協の食堂で食事ができます。なので、昼と夜で各600円を目安に、食堂で食べています。1年もすると食堂の味に飽きてやめてしまう人もいるようですが、私は4年間利用しています。

食堂では毎週フェアがあり、さまざまなメニューが登場するので、私は飽きないです。「鶏ポンから揚げ」という、鶏のから揚げにポン酢がかかったメニューが人気で、「とりぽん」という生協のキャラクターになっているほどです。
朝食は家で食べています。5枚切りの食パンとヨーグルトを買っておいて、これを月曜〜金曜の5日間で食べます。家を選ぶ時にスーパーが近くにあることを条件の一つにしていたのですが、食材を買うことはほとんどないのであまり関係なかったですね(笑)。卵や牛乳を1パック買っても使い切れないし、食材が傷んで捨ててしまうよりは今のほうがいいと思っています。生ゴミがほとんど出ないので、ゴミ捨ても楽。トイレットペーパーやシャンプーなどの生活必需品は買い忘れがちなので気をつけています。

アルバイトは月3万円
――アルバイトはしていますか。
週2回の塾講師と、不定期でテストモニターをしています。中学時代は学校より塾の先生のほうが好きで、今はその時に通っていた塾の系列校で小中学生を対象に国語と算数と数学を教えています。時給1400円で、授業前の準備や、授業後の質問受け付けなども時給1000円をもらえます。定期試験の期間中も含めて、週2日入っています。
もう一つのテストモニターは、模試の難易度にばらつきが出ていないかをチェックするもので、実際に自分で問いてみて確認するという仕事です。こちらの時給は約1000円です。
この2つのアルバイトで毎月約3万円を確保して、これを外食費や教科書代に充てています。外食費は約2万円で、友達と飲みに行ったり、遊びに行ったりするときに使います。法学部では、法律が改正されると教科書や『ポケット六法』などの資料も買い替えなくてはならないので結構大変です。
――サークル活動はしていますか。
「法友会」という法学部生しか入れない公認サークルに入っています。地元弁護士会の先生と連携して、中高生に身近な法律問題について学んでもらう活動をしています。私は2年で代表、3年で会長を務めました。
法律というと、かなり難解で机上の空論と思われがちです。でも、例えばコンビニでお菓子を買う時も実は「売買契約」が成立しているように、法律は身近な存在です。私もサークルで法律のことを教えながら、そのことを再認識できています。かといって、法律のことばかり考えすぎると、一般の人の素朴な疑問や感情がなおざりになってしまいます。そういったものにも気づかされ、このサークル活動はとてもプラスになりました。
2024年春からロースクール(法科大学院)への進学が決まっているので、一緒に進学する友達と自主ゼミを設けて、司法試験対策として、さまざまな問題についてお互い検討し、議論することを続けています。
朝8時から夜10時まで法律の勉強
――岡山大学法学部に進学して、よかったと感じるのはどんなことですか。
岡山大学は2020年4月に中四国地域で初めて「法曹コース」(岡山大学では「法曹プログラム」と呼ぶ)を設置しました。選抜を経て、2年次から始まるこのプログラムに所属すると、学部の授業に加えて、法科大学院の教員による未修者向けの授業を受けることができます。また、学部を3年間で早期卒業して、ロースクール(法科大学院)の2年間の既修者コースへ進学するという選択も可能になります。その場合は、従来よりも2~3年早く法曹として活躍できることになります。私は学部4年まで進み、春からいよいよロースクールですが、このプログラムに参加できたことがとてもよかったと思っています。
今、所属しているゼミは民事訴訟法が専門ですが、このゼミの担任が法科大学院の先生で、少しでも早くその先生に学びたくてこのゼミを選びました。私は検察官志望ですが、民事についても学ぶことは大切だと思ったからです。刑事では、事件の真実は何かを追求しますが、民事では紛争の当事者間にとっての真実は何かを求めるのが目的です。そうした感覚を学ぶのは自分にとってプラスになると考えています。
――司法試験を視野に入れた勉強は、入学時から始まっているのですね。
1日に何時間勉強しているかは計ったことはありませんが、朝8時には大学に来て、夜9〜10時までいる毎日です。日中はサークルの部室か、ロースクール1階の自習室で勉強し、空きがない時は図書館に行っています。私の周りも司法試験を目指す友達が自然と集まっているので、一緒に勉強をしています。

――息抜きなどはしていますか。
読書が好きなので、好きな小説を読んでいる時が息抜きになっています。節約のために古本を買うことも多いのですが、綿矢りささん、西加奈子さん、東野圭吾さんなど、自分が好きな作家の小説は新刊で買っています。
休みの時には友達と旅行にも行きました。岡山県内の蒜山、島根県の出雲大社、大阪府のUSJなどに行きましたし、青春18きっぷを使って青森県も旅しました。

――帰省はしていますか。
岡山から愛媛県松山市までは高速バス1本で行けるので便利です。片道3時間、約4000円で行けます。春休み、夏休み、年末年始に帰っています。
一人暮らしではほとんど自炊をしませんが、両親が共働きなので、帰省した時は家で食事を作っています。
――岡山での生活はいかがですか。
岡山大学は岡山駅に近くて便利です。駅周辺にいろんな商業施設もあります。松山もそうなのですが、坂がないので自転車での移動がしやすいのもいいですね。また、岡山は晴れの日も多く、松山より住みやすい印象です。
今年からいよいよロースクール進学で、ますます勉強に励むことになります。将来の夢を目指して頑張っていきたいです。
【1カ月の主な費用】
※学年は取材時のものです。
(文=𠮷川明子)