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Channel: 法律・政治・政策系 | 朝日新聞Thinkキャンパス
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ゼミでコンテストに出場し、就活に出遅れ… 救ってくれたものは?

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■私の就活体験記

多くの学生は大学3年になると、就活が本格的に始まります。インターンシップは大学の夏休み期間を利用して実施されることが多いため、参加するにはその前から業界や企業研究に取り組まなければなりません。しかし、学業や留学、サークル活動などを優先すると、就活が遅れてしまうケースもあります。文具・家具メーカーのコクヨに就職した社員の就活体験を紹介します。(写真=コクヨ株式会社グローバルステーショナリー事業部販売マーケティング本部の辻本瑞季さん、「Thinkキャンパス」編集部撮影)

焦りから始まった就活

「キャンパスノート」などの文房具で、学生にとってはおなじみの文具・家具メーカー、コクヨ。2024年に入社した辻本瑞季さんが就活を始めたのは、3年次も終わりに近づいた1月ごろでした。辻本さんは、同志社大学政策学部で2年の秋からは地方創生をテーマにしたゼミに所属していました。就活のスタートが遅れたのは、ゼミの活動のためでした。

「3年次にゼミのメンバーで内閣府が主催する『地方創生☆政策アイデアコンテスト2022』に出場しました。政策をプレゼンする最終審査会が12月にあり、夏ごろからその準備に時間を費やしていたので、就活をする時間がありませんでした」
プレゼンのテーマは、「学生がつなぐ地方創生移動販売」でした。
京都市の農家で規格外となった野菜を移動販売で売るという内容で、規格外野菜がどの程度廃棄されているのかという調査から始まり、実証実験のために一軒ずつ農家さんを回って協力を依頼したり、行政側とかけあって売り場を確保したりしました。ゼミ長だったので、チームをまとめるのは大変でしたが、いろいろなことに挑戦できて貴重な経験になりました」

ゼミで、規格外の野菜を移動販売する実証実験を行った(写真=本人提供)

辻本さんのチームはコンテストの「大学生以上一般の部」で見事優勝し、地方創生担当大臣賞を受賞しました。
インターンシップなどには全く参加できなかったので葛藤はありましたが、最後までやりきり、結果もついてきて大きな自信になりました。頑張ってよかったと思いましたし、この経験を通じて自分の好きなことや、やりたいことも明確になりました」

「地方創生☆政策アイデアコンテスト2022」で優勝。左から4人目が辻本さん(写真=本人提供)

OB・OG訪問で企業研究、面接練習

コンテストが終わって、3年次の1月から就活モードにシフトしました。活用したのが、興味のある企業の社員にOB・OG訪問ができる就活アプリです。基本はオンラインで、辻本さんは2週間の間に約50人もの社会人と面談しました。

「企業説明会では聞けないような詳しい業務内容を聞けたので、企業研究ができたし、エントリーシートや面接での回答についてフィードバックももらえました。短期間に大勢の社会人の方と話せたことで、出遅れた分を補えたと思います」

ゼミでの活動やOB・OG訪問を通して、自分のアイデアをいろいろな人の協力を得ながら形にしていく作業が好きなこと、さらにそれを人々が使っているところを見ることにやりがいを感じることを認識し、それらを実現できるのはメーカーだという結論に達しました。コクヨは老舗メーカーですが、近年はデジタル技術をとり入れたIoT文具を開発したり、品川のオフィスにだれでも利用できるパブリックエリアを設けたりするなど、社会に合わせて変化しています。辻本さんは、新しい事業にチャレンジしていく同社の姿勢にひかれて、入社を希望するようになりました。
「小中学生向けの塾でのアルバイト経験などから、子どもたちの想像力を広げるような商品開発に携わりたいという思いがあり、それが就活での私の軸になりました。コクヨはその思いに多角的にアプローチできると感じ、入社を志望しました」

インスタで知る「社内のリアル」

面接で驚いたのは、一度も志望動機を聞かれなかったことです。

 「対話の中で個性を引き出してくれるような面接でした。ゼミでの体験などをありのまま、感情を交えて話すことができました。個性を大事にする会社だとわかって、この会社で働きたいという思いがより強くなりました」

コクヨの新卒採用に関するインスタもこまめにチェックしていました。インスタでは会社のことがわかるだけではなく、エントリーシートの書き方や面接対策など、就活に役立つ情報も発信しています。

インスタライブもやっていて、オフィスでの服装とか、社員が働いているリアルな雰囲気が伝わってくるので、よく見ていました。入社後にインスタに登場していた先輩社員に会ったときには『本物だ!』と思いました(笑)」

新卒採用担当によるインスタライブの様子(写真=コクヨ提供)

入社後、2カ月間の研修を経て文房具部門の営業担当になりました。他社とのコラボ商品を企画する部署で、配属されて2カ月足らずですが(2024年8月現在)、すでに商品の企画にも関わっています。

「文系出身の私がいきなり企画に携われるとは思っていませんでした。企画を立案することについては、ゼミやアルバイトでの経験がそのまま生きています。パワーポイントを使って相手にわかりやすく伝えるのも、コンテストで発表したときの経験が役立っています

東京品川オフィス「THE CAMPUS」で。辻本さん(左)と、新卒採用担当の長濱陽奈里さん(写真=「Thinkキャンパス」編集部撮影)

大学時代には、ゼミの活動だけでなく、塾講師のほか、タリーズコーヒーのアルバイトも経験し、タリーズ店内で子ども向けの体験型イベントなども企画していました。

「コロナ禍に入学したので、時間があった分、いろいろなことを体験しました。また高校までは運動部でしたが、大学では軽音サークルに入ってドラムを担当しました。音楽初心者だったものの意外とハマって、自分の新たな一面にも気づくことができました。いろいろなことにチャレンジしたからこそ、自分が本当に好きなことや、やりたいことがわかったのだと思います

軽音サークルでは初めてドラムに挑戦(写真=本人提供)

たとえ就活のスタートが出遅れても、学生として専念すべきことに一生懸命に取り組んでいれば、挽回するチャンスはいくらでもあるといえそうです。

>>【連載】私の就活体験記

(文=中寺暁子)


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