■先輩パパ・ママの受験体験記
長女が明治大学法学部に合格した鎌本留美子さん(仮名)。長女は中学生のころ、女性検事の活躍を描いたテレビドラマを見て法曹界に憧れ、私立大学では司法試験合格者が多い慶應義塾大学法学部を目指して受験勉強をスタートしました。4人きょうだいなので家計を心配してくれて、塾に通わずに大学に現役合格し、給付型奨学金受給も果たしました。合格までの軌跡を振り返ります。(イラスト=Michiko Nishikawa)
ドラマで憧れて司法試験を目指す
2018年に放送されたドラマ「正義のセ」(日本テレビ系)。娘はこのドラマの主演の吉高由里子さんが扮(ふん)する若手検事の姿に憧れ、法曹界を志すようになりました。そのため第1志望は司法試験合格率が高い慶應義塾大学法学部に。また第2志望以下も中央大学法学部をはじめ将来の司法試験を目指した選択になりました。
娘は千葉県内にある県立の進学校に通っており、同級生はまじめに勉強に取り組む子が多かったため、「みんなも頑張っているから、自分も頑張ろう」と友達と切磋琢磨できる環境でした。受験勉強に本腰を入れ始めたのは、高校2年から。早い段階から志望校を私立文系に絞っていたので、高校2年から理科は選択しないカリキュラムでした。
受験期が近づくと塾通いする友達も多くいましたが、娘は塾には通わない選択をしました。その代わりに自分でルーティンを決め、勉強時間を確保していました。具体的には、朝は早めに家を出て、学校に着いたら授業前に教室で1時間半勉強。授業後は教室か図書室で学校の部活終了時間まで勉強し、そのあとは公民館のようなフリースペースに移動し21時まで勉強してから帰ってきました。
我が家は4人きょうだいで、娘は一番年長です。家の中はいつもにぎやかですが、娘が帰宅する午後9時過ぎには弟や妹たちが寝るように協力してもらいました。娘は帰宅後も午前0時まで勉強するという、自分で決めたリズムをひたすら繰り返していました。
苦手だった小論文対策は高校の先生がサポート
第1志望だった慶應義塾大学法学部の入試は、英語、社会に加えて小論文が課されます。娘は小論文が苦手でしたが、合格するには避けては通れないと知り、対策を考えました。頼りにしたのが、高校の国語の先生です。過去問の小論文の解答案を書いては、学校の先生に添削してもらい、添削内容に応じて書き直すということを、夏から入試直前までとことん繰り返しました。学校にいる時はもちろん、受験直前で学校に登校しなくなった時期でも、メールを通じて丁寧に添削してくださった高校の先生には感謝しています。
計画的に受験勉強を進めていましたが、残念ながら第1志望と第2志望の2校は不合格でした。この2校への思い入れが強すぎて、そのほかに受けた明治大学と日本大学は過去問も解かずに、問題数だけ確認し、時間配分のみイメージして試験に臨みました。結果的に明治大学に合格し、進学することになりました。
我が家は野球大好き一家で、法曹界とはかけ離れたイメージの一般家庭です。父親は元野球部で地域の野球チームのコーチをしていますし、弟や妹もみんな野球をしています。でも受験期は感染症への心配から、家族そろって野球チームのイベントに行くことは避けました。あとは娘のためにしてあげたのは、温かいお弁当を用意するくらいです。野球一家の我が家から、司法試験を目指す娘が生まれたのが、いまだにちょっと不思議な気がしています。
合格発表後に地域の給付型奨学金を発見
合格発表が終わった3月ごろ、住んでいる地域の広報誌で目をみはる情報を見つけました。地元の有力企業による「春から大学生になる人、または現在在学中の人に向けた給付型奨学金の募集」です。所得制限などもなく、住民なら誰でも応募可能ということだったので、娘に応募するようすすめました。
広報誌には、奨学金給付の人数も「若干名」としか書いておらず、給付金額など詳しい情報は載っていませんでした。娘は応募書類に「幼い頃から法律を学びたいと思っていた」「司法試験に合格したい」「そのためには大学院も行きたい」と、夢をぎっしり書き込んで提出しました。選考は第1次書類審査が小論文、第2次試験が面接。面接では「複数の大人に囲まれて緊張した」と言っていましたが、高校の先生に小論文対策をしていただいたおかげもあり、6月に無事、奨学金給付決定の知らせをいただきました。
その後、広報誌に掲載された奨学金給付者を見ると、3人のうち2人は継続給付の方で、新規に給付されるのは娘だけでした。奨学金は毎年継続するための面接審査がありますが、基本的には卒業するまで年額100万円が継続支給されるという、大変充実した内容です。「せっかくこれだけの支援をいただいて学び続けていくのだから、大学院修了、司法試験合格、法曹界での活躍、と結果で応えていきたいね」と娘とも話しています。
また、大学寮の入寮にも応募したところ、大学の敷地内から徒歩1分の便利な場所にある学生寮に入寮できました。大学寮は留学生も多く、グローバルな環境で、日常的に英語を使い、留学生たちとの交流も楽しんでいるようです。大学ではジャズサークルに入るなど、いろいろなことに興味を持ちながら、すでに司法試験に向けた勉強も始めました。第1志望の大学には残念ながら不合格だったものの、活動の幅を広げながら大学生活を謳歌(おうか)している娘。これからも夢に向かって頑張ってほしいと思っています。
(文=勝又裕子)